16、怪我人
右足は地面につかないようにする生活が始まった。
今日から松葉杖が相棒となった。
いかにもケガ人という風になるので、周りが気を使ってくれると思ったが、甘かった。
バス停までテクテク、バスの中、電車ではオドオド、駅から彼女の家まではまたテクテク。
誰も席を譲ろうともしない。
世間は冷たいのだとこの時知った。
降りる駅までもう少しという所で、
「どうぞ!」と席を譲ってくれたが、
すでにムキになって立っていたので、「もう降りるので」と断った。
いつもの[バレンタインデー(1)参照]
おにぎり屋のおばちゃんは
「すぐ治るよ、若いから」と言って、また、おいなりさん2個くれた。
彼女はというと
「大丈夫?部活しばらくできないけど、その分ゆっくり休めば!」
と言っていた。
ついでに、「はしゃぐ事もできないね」
とも言っていた。
(んー、それは少しつまらん)と思った。
学校に行くと、みんながどーしたと聞く。
「クズケン足ケガしたの?」
誰かに会う度に。
応えるのが面倒くさい。
さすがに学校ではみんな優しくしてくれると期待していたが、それも甘かった。
<次話へ続く>
くまちゃんカフェ開業までの奮闘記。
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